連載エッセイVol.11を掲載しました

3期生を迎えて

黒田 玲子

科学技術インタープリター養成コースも、この10月に3期生を迎えることができた。このプログラムが10月開講なのは、海外と同調した秋に新学年を始める体制をとっているからではない。このプログラムの重要なポイントの一つである、東大の修士・博士課程院生を対象とした「副専攻」の位置づけに理由がある。まず、自分の本専攻をしっかりと把握したうえで応募し、選抜を経て受講していただきたいからである。本専攻の研究がうまくいかないので、社会と科学技術の関係に力を注ぐというのは好ましくない。本専攻の指導教員から推薦状をいただき、本専攻の研究能力とインタープリターとしての能力の両方を5段階で評価していただいているのもそのためである。落ちこぼれの意識を持ってこの活動に参加するのではなく、世界トップの研究をやりながらも、社会の中の科学の位置づけをしっかり把握していただきたいと思うからである。東大のプログラムのキーワードは、「何を伝えるか、どう伝えるか」である。一般の人や子供たちに最先端の科学を分かりやすく伝えることも重要であるが、科学の本質を知り、社会と科学の関係を理解し、科学的ものの考え方ができ、社会から学ぶ姿勢も大切である。 最近、食の安全を脅かす事件が報道されている。ある会社が産地を偽り偽包品を売っていたのは、まさにブランド品のハンドバッグなどと同じことが食品にも起きている証であり、何らかの対策が必要になっていくだろう。賞味期限をごまかした会社のことも話題になっている。信頼を裏切られたと糾弾するのが大方のマスコミの論調である。嘘をついて消費者をだまし不当な利益を上げていたことは許せないが、「では賞味期限とは何か?どのようにして誰が決めているのか?」と考えてみることも必要であろう。賞味期限の切れる10分前は問題ないのに、10分後に突然腐るわけでもない。連続した事柄に、線引きをしなくてはいけないのが、規則や法律である。消費者は何を望んでいるのか?どのような情報が消費者には必要なのか?そんなことも考えられる人たちに、研究者、博物館の学芸員、官僚、政治家、ジャーナリスト、教師などとして社会の多くのフロンティアでリーダーとして活躍していただきたいと思っている。

『このコースは大変だけれど、やりがいがある』というのが、1期生の感想である。3期生を迎え、教員もまた、気持ちを新たにしているところである。

2007年11月15日号

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