連載エッセイVol.17を掲載しました

先入観から解き放たれるには?

渡邊 雄一郎

昨今、食の問題に関して、非常に残念なニュースが続く。しかし、我々はただ不安をかきたてられる一方ではいけない。ここではヒューマンエラーといった部分ではなく、科学リテラシーに関連する部分についてかんがえてみよう。

科学的に新しいものが生み出された際には、市民はとかく慎重になるが、一様にその反応が示されているだろうか。サプリ、トクホとよばれるものに対しては、遺伝子組換え食品に対するほどの警戒心はないような気がする。実際、遺伝子組換え食品にくだされるような厳しい審査過程はない。法律で指定されていないからというのが理由。科学的にみると非常に抜けを感じる部分である。最近、イソフラボンに対しては過剰な摂取を慎むように勧告が出されたのは記憶に新しい。

イソフラボンはダイズなどの多く含まれる天然成分でもあるために、警戒もされていなかった。でも天然成分が安全ということは、科学的に根拠は全くない。そもそも植物は簡単に動物に食べられまいとして、苦みなどの天然成分を可食部にたくわえるのである。それを人類は農業革命以来、食べやすい、おいしいといった性質をもった植物を選び、大事に育てることを学んできた。おいしいということは大事であるが、嫌な成分を含まない植物は他の生物にとってもおいしいはずである。すると虫害、病害に対しては弱くなる。なのに、現在の消費者は見かけの悪いもの、虫の食べたものがあるような野菜を買うことを避ける。体の弱くなった作物を、消費者が手に取るような形できれいにそだてるにはどうするか。だからといって農薬などを使うのはままならないといった要求も起こる。よく考えると、矛盾しているのである。

技術、あるいはあらたな成分、製品には新しく売り込む部分があろう。それをベネフィットとする。と同時に従来のものに比べて問題となる部分、リスクもあろう。何事にも100%安全、あるいは安心ということはない。どれだけリスクがあるか。それを凌駕するだけのベネフィットがどれだけか。従来のものを越えてあれば、採択する価値がはじめて生まれる。天然成分がいつも人工成分より安全ということはない。アフラトキシンは、分子生物学の教科書にも出てくるくらい非常に強い発がん性物質である。ある種のカビがつくる立派な天然成分である。農薬よりこの成分で汚染した米の方が怖い。こういった状況が的確に判断されて、真の食の安全が早期に保障されることを祈っている。

2008年10月20日号

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