連載エッセイVol.22を掲載しました

30回噛め!

山科 直子

科学技術インタープリター養成プログラムが、「食」を考える東京大学・KIRINパートナーシッププログラムの活動にも参画するのを記念(?)して、我が身の食生活を振り返ってみたい。

栄養のバランスやカロリーはもちろん、食材の産地や添加物にもそれなりに気を使い、料理の腕も悪くないと自負してはいるのだが、その腕は酒のつまみを作るときぐらいにしか振るわれていない。というか、つまみあっての酒、高級フランス料理だって、相性のいいワインと食すればこそであって・・・酒ではなくて食事の話でした。失敬。 酒のつまみ以外の献立の手抜き加減は置いといて、このところ、一口食べたら30回噛む、というのをやってみている。噛むことで、脳を刺激して頭が良くなり、ダイエット効果もあり、顔の骨格を鍛えて滑舌が良くなって、唾液分泌を促して味覚も発達する、などなど素晴らしいことだらけだというのだから、やらない手はない。

そんなお気楽な気持ちで始めてはみたものの、回数を数えながら噛むのはなかなかしんどい。ぼんやり食べているとすぐ忘れてしまうし、仕事しながらとか、誰かと一緒のときは、最初の数回から先はもうわけがわからなくなってしまう。そしてなにより、30回も噛み続けられる食べ物は意外と少ない。豆腐のようなもともと噛みごたえのない食品もあるし、麺類をいつまでもモグモグするのは鬱陶しい。とにかく「食べる」行為を素通りできなくなってきた。

だからといって敢えて繊維質の多い肉や野菜ばかりを選ぶのもなんだかなぁ、と思わなくもないが、噛むほどに味や食感が変化していくのを楽しめるのは、文句なしにこういった食材だ。食べた瞬間にお口の中でとろけてしまうステーキや、1日分の野菜がまるごと入ったジュースも好きだけれど、噛むことは、体の働きや食の問題から文化まで様々な考察を促してくれる。幸い、噛んでいるうちにどんどんまずくなる食べ物にもまだ出会っていないので、歯が丈夫なうちはこの「噛む食事」を続けてみようと思っている。

・・・とまあ、今更ながら自分で自分を食育しているところですが、半年もすれば、天才的頭脳を持ち、ナイスバディで滑舌正しく、味にうるさい、そんなラブリーな私になっているかも。どうしましょ。

2009年5月25日号


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