連載エッセイVol.71を掲載しました

なぜだろう、なぜかしら ダイ・ハード編

廣野喜幸

小学理科の読本『なぜだろう、なぜかしら』シリーズについて、これまで3回(3年!)にわたり触れてきた。1955-6年に出版された同シリーズは、小学生から集めた質問に答える「ニーズ先行+広く浅く」方式をうみだし、半世紀に及ぶロング・セラーとなった。1977年には、手塚プロ協力のもと、ビジュアル化もなされた。だが、1997年以降品切重版未定が続き、命運尽きかけた感が強い。そこで、私の仮説は「ニーズ先行+広く浅く+ビジュアル方式も賞味期限が切れた」となる。『なぜだろう、なぜかしら』シリーズにオマージュを捧げ、科学技術コミュニケーションを志す若人に、「理科読本の新機軸を考案せよ!」と檄を飛ばす「なぜだろう、なぜかしら レクイエム編」が、前回執筆時(2012年6月)における今回の構想であった。

近ごろの院生諸君は、さすがに自分のテーマについては頑張っているが、そこから一歩でも踏み出す領域は敬して遠ざける。もっと広い視野をもつ必要があるのではないか。常々こう語っているのは誰だ。私である。レクイエム編構想に対し、視野狭窄に陥っているのではないかと自省の念がわきあがる。1例から仮説を引き出して済ましている点が気にかかる。「なぜだろう、なぜかしら」とつらつら考えてみたところ、朧気な光景が浮かび上がってきた。そうそう、類書が横に並んでいたなあ。同様なシリーズがあったとすれば、その消長はどうなっているのだろう。他シリーズも品切重版未定状態が続いていたとしたら、廣野仮説も確からしさを増すのではあるまいか。

調べてみると、1957年には『理科なぜどうして』、1968年には『なぜなに理科』、1973年には『理科のひみつ』、2011年には『たのしい!科学のふしぎ なぜ?どうして?』各シリーズが刊行されている。『理科なぜどうして』は、1989・2002年の二回改訂され、『理科のひみつ』は『なぜ?どうして?科学のお話』と改称され、2009-11年に最新版が刊行されている。あれま。盛況を呈しているではありませんか。じゃあ、元祖『なぜだろう、なぜかしら』はなんで品切重版未定なんだ? 不思議に思っていたところ、ついに出ました新シリーズ(2012年12月)。仮説が潰えた落胆もなんのその、子供のために(と称していそいそと)買ってみました。そのご報告についてはまた次回。再見!

2013年6月24日号

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