連載エッセイVol.82を掲載しました

事業仕分け再訪

定松淳

3月の末に、インタープリター8期生のうち5名が修了論文を提出し、プログラムを修了した。8期生といえば、昨年度末の2013年2月に同行した研修旅行が思い出深い。研修旅行は、プログラムの必修授業のひとつである、黒田玲子先生の「科学技術インタープリター論I」の一環として毎年行われている。8期生は、理化学研究所のスパコン「京」(兵庫県神戸市)と大型放射光施設「SPring8」、「SACLA」(兵庫県佐用郡)を訪問した。

この研修旅行の特徴は、こちらでも訪問先のことについて調査して発表を行い、あちらのスタッフとディスカッションを行う点にある。インプリの学生は多様な分野から集まっているので、色々な発表があって面白い。考古学専攻の学生が、風土記にさかのぼって佐用郡の歴史を紹介してくれたのは、びっくりだった。一方で、この両施設は民主党政権下で事業仕分けの対象になった施設であったため、その点を取り上げた発表では議論が白熱した。

マスコミでは「世界一」かどうかが注目された「京」だが、事業仕分けの議事録を調べると、理研側も経済効果を算出していた。「なぜそれを提示しなかったんですか?」「数字が一人歩きするのも危ないよ。」「だったらどういう基準で決めていくのがいいと思いますか?」これに対してスタッフの一人が「諸外国ではこの分野にこれくらい投資している、というやり方がいいんじゃないか」と答えた。この回答に学生の一部が非常にがっかりした表情をしたのが印象に残っている。

これはどちらにも理がある。もっと主体性をもって決めようよ、という学生の心情も理解できる。と同時に、トップダウンの意思決定が難しい日本において「外の神に頼る」という意思決定の仕方はよく採用される形でもあるからだ。後者を全否定しては組織は動かないし、かといって前者を全面的に捨て去ってしまっては長いものに巻かれろ式の意思決定しかできなくなる。

両者をすりあわせながら、新しいものをどれだけ入れ込んでゆけるかが日本社会の課題だろう。そのためには建前とはちがう、日本社会の作動の仕方をもっと明るみに出し、かつ解明してゆく必要がある。インプリには社会科学系の参加も強く求められている、その思いを改めて強くした体験だった。

2014年5月26日号

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