連載エッセイVol.92を掲載しました

Engineerは技術者?工学者?

大島まり

少し前になるが、昨年の9月に学会でイギリスを訪れた。当然ながら、外国なので入国手続きがあり、係官から質問を受ける。

係官:What is the purpose of your visit ?
私  :I am here to attend a conference on micro and nano flows.
係官:Oh, so you are an engineer ! Interesting.

様々な国で入国手続きをしてきたが、たいていはScientist、Researcher あるいはProfessorやTeacher と言われることが多く、Engineer は初めてであった。つまらなそうに事務的に質問をする20代とおぼしき若い係官の口から、Engineerという言葉が自然にさらっと出てきたのは驚いた(失礼)。イギリスでは、Engineerは職業名として定着しているようだ。

では、日本でのEngineerはいかに。技術者と訳されることが多いが、微妙に違う感じ。一方、Engineeringは工学と訳されるので、工学者とも訳される。しかし、あまり聞かないし、ピンとこない。もともとEngineerは、Engineに-erがついた言葉である。Engineの語源はラテン語のIngeniumであり、「生まれながらの才能」や「賢さ」を意味する。しかし、しだいに意味が変化し、蒸気機関のように、蒸気の圧力を機械的エネルギーに変換する動力機関を意味するようになった。しかし、日本でEngineを動力機関と言う人はあまりなく、エンジンで通じる。

また、最近では、Googleの検索エンジンのように、必ずしも動力機関を指すものでもなくなってきている。蒸気機関が主要な動力源であった産業革命の時代から、現代社会はコンピュータやインターネットと産業構造や社会が変化している。このように時代とともに、エンジンの適用範囲も変わり、拡がっているようである。ただ、蒸気やキーワードなどの入力をエネルギーや情報などへと変換する機関であることには変わりない。いつの時代も、エンジンは科学技術の要素を世の中で利用できるように変換する、すなわち、科学技術と社会を結びつけ、活性化する役割を担った機関なのであろう。カタカナの呼び方は極力避けたいが、エンジンの原点に立ち戻り、Engineerをエンジニアと言うのが、一番しっくりするのではないかと思う。

2015年3月25日号

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