連載エッセイVol.114を掲載しました

科学離れは止まったのか?

長谷川寿一

本インタープリター養成プログラムがスタートしたのは2005年、早11年の月日が経過した。設立当時の代表の黒田玲子先生、その後を引継がれた石浦章一先生は定年され、いつの間にか私が現役最年長教員である。というわけで、今年度の本プログラム「基礎論」講義では、歴史を振り返り本プログラムの総括を試みた。

黒田先生が書かれた設立趣旨には「わたしたちは、日常生活のあらゆるところで科学技術の恩恵を受けています。でもその一方で、複雑化する科学技術への心理的な距離は遠くなるばかり。世の中の科学離れも進んでいます。このままでは、科学技術と社会との関係はバランスを失い、進むべき道を誤りかねません。そこで生まれたのが、科学技術インタープリター養成プログラムです。」とある。では、11年をかけて本プログラムは科学離れを少しでも止められたのか?この問いを受講者諸君と考えることにした。

本プログラムは11期までに114名の受講生を数え、修了者は研究職としてだけでなく、省庁や出版社などで科学と社会を繋ぐ役割を担っている。本プログラムを通じて修了者自身の意識が大きく変わったことは、HPのビデオを見ればすぐにわかる。しかし、本プログラムが社会を変えるほどのインパクトがあったのか。実はその実証的効果測定はなされていない。

2000年代半ば、科学離れを示すさまざまなデータが世を賑わした。当時、科学技術基礎概念調査の平均正答率で日本は54%、米国や北欧、英独仏伊より低く、科学リテラシーの低さが嘆かれた。しかし、その後の追跡調査は行われていない。2004年、科学技術情報に対する関心度調査では、40〜60歳代と比して20〜30歳代の関心度は格段に低く、若者の科学離れはたしかに深刻であった。がその後、若者の意識が改善したかどうかのデータは公表されていない。この10年間、インターネットを通じて科学技術情報に接する機会は格段に増えたことは間違いないが、科学書がベストセラーになることはめっきり減り、科学雑誌はいまや風前のともしびである。科学離れに歯止めがかかったという証拠も実感もない昨今である。自分自身の課題でもあるが、「科学離れ」の今日的検証が求められている。

2017年1月25日号

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