連載エッセイVol.115を掲載しました

リスクを自ら考えていく姿勢を育てるには何をすればいいのか

渡邊雄一郎

昨年の夏、海外に行った際に中東系の航空会社を初めて利用して面白い経験をした。離発着前には、どこの航空会社も機内の安全の説明をビデオで流すのが常である。国内の飛行機会社もそれぞれに作成しているが、アテンダントが説明したり、ヴァーチャルな映像として説明をしたりしているが、ほとんどの人が見ていないのが実情である。この航空会社は、ヨーロッパの有名なサッカーチームのスポンサーになっているのを活かして、サッカー場に舞台を設定して、観客席でシートベルトをすること、してはいけない行為にはイエローカードを出す、非常事態の際に取るべき姿勢などを選手、観客交えた映像を見せていた。スター選手が何人も出てくるので複数回でも見るのだろう。もう一つ、私は音楽を聞いていたのだが、アテンダントが何も言わずに耳に付けていたイアホンを外していったのには驚いた。機内アナウンスを聞くように仕向けたのであった。

学内でも安全、倫理のために取るべき行動について、多くの冊子が作られているが、どのようにしたら多くの人の目をひきつけられるか。著名な講師が話をされる講演会、シンポジウムが開催される際でも、構内でポスターを貼り、フライヤーを配るぐらいでは目に入らない。数多く類似の紙媒体が氾濫している中では、見えたようで情報が取り込まれず、友達に誘われたり、LINE, Twitterなど間接情報には目を向ける。ぜひ目に入った情報を一瞬でいいから吟味して重要なことか、自分に関係することかなどを判断してほしいと思う。現代社会では自分の直接体験をもとに判断するという機会が減っているのかもしれない。実際に黒い雲が見えても、傘を持っていくかはネットで天気予報を見てから決めたり、目の前にある事件や事故を見ながらそれをネットで確かめたりしている。

現代社会で様々なリスクを考える必要性が高まっているが、まずは自分の直接体験、過去の情報をもとに判断できる能力を磨くことは必要であろう。若い世代には嫌われても、そうした重要性を言葉にして伝える必要を感じている。そしてある程度は、模擬的に危険な事象を直接見せる必要も感じている。

2017年2月22日号

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