連載エッセイVol.151を掲載しました

他分野/多分野との交流

内田麻理香

今年度の4月から、『朝日新聞』の論壇委員を務めている。論壇委員が何をしているのか、簡単にご紹介したい。月に一回、論壇委員が集まる合評会が開かれるが、ここで各委員が7~10本ほどの論考をランキングをつけて紹介する。チェアの津田大介氏は、その論考の一覧を参考にしながら「論壇時評」を執筆する。

各委員は、自分の担当する分野(「憲法」、「国際」、「経済」などがあり、私は「科学技術」だ)で注目する論考を選ぶため、雑誌、インターネットなどあらゆる媒体から、可能な限り多くの論考に目を通すことになる。この論考をピックアップするための作業は、予想をはるかに超えた大変さで、いまは活字と格闘する日々だ。委員が実際に顔を合わせる合評会は、毎日の地味な作業に対する報酬にあたるのだろうか。ふだん、接することがないような他分野かつ多分野の専門家たちと、共通の話題で議論する場は、非常に刺激的だ。注目する論考が同じであっても専門が異なれば、違った視点から選んでいることになる。それぞれの専門からの話を提示してもらう機会を得たことで、私の視野に入る風景がかなり変化したと認識している。

他分野かつ多分野の人たちが集まる論壇委員の合評会は、科学技術インタープリター養成プログラムによく似ている。このプログラムは、専門知と社会の関係を学ぶための大学院生向けの副専攻プログラムであるため、幅広い専門を学ぶ大学院生が集う。履修間もない頃の学生を見ていると、まずは自分の専門の内容を、専門外の人に伝えるだけでも難しさを感じるようだ。

しかし、他分野かつ多分野の学生たちと接することで、彼らは自分の専門をメタレベルで認識できるようになる。他分野と接しないと気づきにくいが、ある専門には暗黙的にせよ明示的にせよ、さまざまな「作法」がある。他の専門の作法を知った学生同士の交流は、端からみても実に活き活きとしている。その専門ならではの特徴を理解し、「このような発想をするのは、○○さんらしいね」というように、互いのもつ「違い」や「ずれ」を楽しんでいるようなのだ。

本プログラムの魅力のひとつは、他分野かつ多分野の人たちとの交流にあると考える。科学コミュニケーションでは、同じ事象をみる際でも、各人で問題の設定が異なる「フレーミング」が重要な論点となっている。自分とは違うフレーミングに触れる機会は、学生にとっては科学コミュニケーションにとどまらない、大きな学びとなることは間違いない。

『学内広報』no.1532(2020年3月25日号)より転載

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